チェリーパイを作ってほしいと頼んだものの、食べたことがないと言う彼女のために、エースは麓のカフェに監督生を連れていく。
「ど?」
「全然甘くなくてびっくりした」
「そーじゃなくてぇ」
「本当に先輩いなくてよかったの?」
「なんでデートに先輩挟まなきゃいけないの? オレはお前に作ってもらいたいの」
表情一つ一つを漏らさぬよう見つめるエースの視線に落ち着かず顔を上げた監督生だったが、目尻を細めて柔らかく笑う顔に「食べにく」と思いながら視線を下ろす。
「それで食べる時に比べるんだから世話ないな?」
「それはしょうがないじゃんー」
「しょうがなくない」
          
後日
「つまんな」
「文句多いな」下げていい?
オンボロ寮のキッチンで、カフェと全く同じ味のチェリーパイを食べ終わったエースは、二煎目の紅茶を入れながら「次はお前好みで作った方食べよー」と笑う。眉間に皺の寄る監督生。

「はい」と、出されたパイが一人分であることに目を丸くするエース。
          
「お前の分は?」
「グリム」
「あらら」
パイを出し終えたあとも冷蔵庫の前でゴソゴソしている監督生に「まだ何か隠してんな」と思いつつ、パイを口に入れた途端、一瞬固まり、その後表情を歪める。
「きっつ…」
「いいんだよ、これで」
後ろから手を伸ばした監督生は、スパイスがたっぷりと入ったチェリーパイをフォークに刺し、ボウルに入った生クリームをこんもりとつけて口に運ぶ。
「あーーーー!!!」
「ずっる!!」
「ずるくない」

タイトル元: 惑星